最高裁判所第二小法廷 昭和36年(あ)139号 決定 1961年6月22日
主文
本件上告を棄却する。
理由
原審弁護人内藤庸男の上告趣意は、憲法違反をいうけれども、本件の如く公務員がその職務に関し金員の貸与を受け賄賂を収受した場合において、その金員の没収ができないとき、刑法一九条一項三号、二項、一九条ノ二によって、被告人からその金額を追徴することができることは、当裁判所の判例とするところであり(昭和三三年二月二七日第一小法廷決定、刑集一二巻二号三四二頁)、所論は結局単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。(なお本件の金員一五〇〇〇円は昭和三三年法律第一〇七号による改正前の刑法一九七条ノ四にいわゆる「収受シタル賄賂」そのものではなく、且つ、右金員は同法一九条一項一号にいわゆる「犯罪行為ヲ組成シタル物」ではなくて、同条同項三号にいわゆる「犯罪行為ニ因リ得タル物」と解すべきであるから、これを同条一項一号、一九条ノ二により追徴することができるものと解釈した原判決には、法令の解釈適用の誤まりがあるけれども、右の違法は未だ判決に影響を及ぼすものとは認められない。)また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)